「投資なんか、おやめなさい」タイトルはともかく内容はおもしろい

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本のタイトルを見て思わず手に取りました。

投資を肯定する立場として、否定的な意見も知っておきたかったからです。

タイトルはともかく内容はおもしろかったので、ここで紹介いたします。



1. 投資を完全否定するわけではない

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本書は、「外貨建て商品」に関するセールストークへの批判から始まります。

銀行、生命保険会社、証券会社
低金利時代はかれらにとって向い風です。そんな中、各社ともに儲けを出そうとあの手この手を使って顧客を投資へといざないます。

彼らの収入源は主に顧客から徴収する手数料だからです。

そのシステムは知っておいた上で、買い手が売り手の話を鵜呑みにしないよう本書は注意を促しています。

昨今、金融商品は多様化していますが、よくわからない商品ほど手数料が高い。外務員のすすめに応じて買ったものの実はリスクの方が大きかった、なんてこともあるから注意しなさいよ、というわけです

一方、預貯金に関しては肯定的です。
投資商品の売り手は、「将来のインフレに備えて、いまからコツコツと投資しましょう。」というのがキャッチフレーズです。
これに対し、「デフレが続いている時代だからこそ、無理に投資などせず、現在価値を維持してくれるキャッシュを大事にしましょう。」というのが著者の意見です。
これはこれで一理あります。

また、個人での株式投資や、社会貢献型の投資(クラウドファンディングなど)には比較的肯定的です。



2. 投資に失敗した人が書いた本
読んでいくと、著者の内情がわかってきます。
様々な投資商品に手を出し、失敗してきたんだな~というのが伝わってきます。実際に、本書の結びでそのことを明かしています。

しかしながら、その分いろんな商品に詳しいので、実践で多くのことを学んできたことがわかります。皮肉にもいまや自分の失敗を本にして利益を得ているのではないでしょうか?

読み物としては良書です。
銀行や生保などの儲けのしくみは私もよい復習になりましたし、日銀の金融政策の経緯も大変わかりやすく整理されています。経済ジャーナリストの立ち位置ですから当然かもしれませんが、金融の難しい話も読みやすく書けるところは秀逸です。

第5章では「投資家に向かない人」チェックリストも用意していて、私も以前なら当てはまる項目がいくつかありました。初心者の方は自分の適性を知るためにやってみてもよいでしょう。

なお、「投資=ギャンブル」というのが著者の定義です。



3. 投資の本質を理解していないようなくだりもある
投資に対してやや偏見や誤解を感じさせるくだりもあります。

たとえば、「ドル・コスト平均法」
これは、価格が高い時には少なく買い、価格が安い時に多く買うことで、平均取得単価を抑え、運用リスクを低くするやり方です。取得単価はその後の運用成績に大きな影響を与えます。割高なときに全額買ってしまっては資産の減るリスクが大きいので、買う時期を分散させかつ毎回同額で買うことにより平均単価を減らす試みがドル・コスト平均法です。

著者はこの方法に対して否定的です。いくら平均化するとはいえ、高いと思ったときに買ってはダメじゃないかというのです。安く買うことのできる天才投資家ウォーレン・バフェットを真似よというわけです。

これは明らかな誤解です。なぜなら、現在の株価が高いか安いかはたいていの人は容易に判断できないからです。安いと思って買ったら実は割高だったなんてことは日常茶飯事。だから、ドル・コスト平均法が汎用的なやり方として普及しているわけです。普通の人ができないことをやれるからバフェットは天才なのです。

著者の言い分は、おそらく投資信託を動かしているプロと呼ばれる人たちに向けてのものなのでしょう。「あなたたち、無難な方法に頼っていないで、もっと努力して稼ぎなさい!」と言いたいのかもしれません。



4. まとめ
以上、読み物としては大変おもしろいです。

投資に関心はあるがよくわからなくて不安、そんな方にはおそらく勉強になると思います。

ただし、「投資=ギャンブル」ではありません。
単に大損した人、うまくいかなかった人が決まっていう言葉です。

余計なお世話ですが、著者は感情が強すぎて失敗したのではないでしょうか。

感情に支配されないこと、自らがリテラシーを持つことは投資家の心得です。

一方で、投資では損したが、得意の本で取り返す。そんな老獪さも感じられました。

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